江戸時代から続く歴史ある仕事には、独自の符丁を持つ仕事が多くある。同業者間だけで通用するもので、仲間意識の現れともいえる。
髪結職にも独自の符丁があり、江戸時代から使われていた。
髪結のほかにも八百屋、札差(金貸し業)、瀬戸物屋、薬屋、魚問屋、荒物屋などなど、現代に続いている稼業の中には、それぞれ独自の符丁を持つ職業がある。
現在の理美容業は、他業と比べると仲間意識が強い業界といえる。自分がやっとの思いで習得した技術を競争相手の同業者のために講習に出かけて公開する、なんてことを普通にしている業界はあまりない。
髪結職が使っていた符丁と同じ符丁を使っていた職業がある。芸人の符丁だ。いまでもタレントとヘアメイクは密接な関係にあるが、この関係は江戸時代から続いている。
橋のたもとの、人の往来が多い広小路には諸芸を演じる小屋が並び、そこには髪結職が床を張った。江戸の昔から髪結と芸人は隣接する関係にあり、その証左の一つが符丁といえるかもしれない。
前置きが長くなったが、髪結い職の符丁は
1=ヘイ
2=ビキ
3=ヤマ
4=ササキ
5=カタ
6=サナダ
7=タヌマ
8=ヤワタ
9=キワ
になる。
オヤジギャグの延長線上のようで、他業の符丁に比べると、非常に分かりやすい。
ただ、江戸時代は地域の独自性が色濃いので、この符丁が江戸以外の地域でも共通して使われていたかはわからない。
*この一文は、「理美容ニュース【コラム】」(2014年9月11日)を改変したものです
丘圭