徳川将軍の髪結

江戸時代、徳川将軍の髪はどうしていたかというと、御小納戸衆とよばれる、将軍に近侍する御小姓が、月代を剃り、髪を結った。

将軍は朝、起きると、楓の間で歯を磨き、御小座敷で朝食を摂りながら、髪を結ったというが、これは江戸後期のことだろう。
月代を剃り、髪を結いながら食事をしたのでは、おいしい食事も台無しのように思うが、もともと食事は毒味などを行うため、食材の形は崩れ、冷めてしまっていた。

しかも毎朝出される食材も決まっていて、キスが2匹並んだという。キスは「鱚」と書き縁起がいいとされる魚とされるからだ。だからといって毎朝、それも毒味で形の崩れた魚が出されたのでは味気ない。

前述の御小納戸衆は「吏徴」によると110人ほどいて、髪結のほか食事の配膳、庭方、将軍の身辺のご用向きすべてを手分けして行っていた。
将軍の髪をあたる小姓は、手先の器用さもさることながら、刃物を持つだけに信頼されている人が選ばれた。

この御小納戸衆は将軍の間近かにいるだけに、時には話し相手、遊び相手などをすることあり、これを足がかりに出世する人もいた。

食事をしながら髪を結う御小座敷は、将軍が生活する中奥の一室にある。大奥にも御小座敷があるが、こちらは将軍と、その日選ばれた中臈や高貴な女性と寝る部屋になる。

丘圭・著