髪結や己が頭は枯野吹く

「紺屋の白袴」といえば、仕事が忙しくて自分には手が回らない、そんな意味合いです。「医者の不養生」もそれに類似した言葉でしょう。

理美容業になぞえるなら、理容師の無精髭、美容師のプリンヘア、といったところでしょうか。

江戸時代の髪結床にも同様の意味合いの川柳があります。
「かみ結や おのがあたまは枯野ふく」(髪結や己が頭は枯野吹く)

天保元年(1830)に発行された「嬉遊笑覧」(喜多村信節)に「江戸名物鑑」を引用して、前述の川柳が紹介されています。
枯れ野とは、なんとも凄まじくも笑える表現です。

「嬉遊笑覧」では、この川柳を紹介したのに続いて、
「紺かきの白ばかま、医師の不養生もおなじ」とあります。

喜多村信節さんは江戸後期の国学者、考証学者です。「近世風俗志」の喜田川守貞さんも「嬉遊笑覧」から盛んに引用しています。守貞さんは、ある書にいわく、といった出所不明な引用が散見されますが、信節さんは学者だけに引用先を明示しています。「近世風俗志」にある、ある書が、「嬉遊笑覧」によってわかることもあります。

丘圭・著