江戸初期の床屋は早朝営業

いまの理美容店は午前10時ごろ開店し、夜の8時ごろまで営業している店が多い。繁華街など立地によっては終夜営業している美容店もあって、メディアに取り上げられ話題になったことがありましたが、いまはどうなのでしょう。

江戸時代初期に現れた床屋ですが、その当時は早朝営業だったようです。
「嬉遊笑覧」(喜多村信節)に「いま早起きは豆腐屋をたとふる如く、むかしは髪結をいえり」とあります。「いま」というのは国文学者の信節さんが活躍した江戸時代後期です。

「嬉遊笑覧」ではその証左として、句集などに表現された髪結床を紹介しています。
・世の中や 朝寝に髪結 花に風 秋月(洛陽集)
・髪結と 青豆売と 白露と 信徳(同)
・髪結も さぞ朝かおを 仕舞迄 立植(京羽二重)
などの句をあげています。
洛陽集、京羽二重(俳諧京羽二重)いづれも江戸時代前期の俳諧集です。

江戸時代初期の江戸の床屋がなぜ早朝営業していたかは、推測するしかありませんが、おそらく仕事に行く前、出仕する前に月代を剃り、髷を結っていたのではないかと思います。白露が消える昼前には店終いしていたようです。客が来ないときは閉店、実に合理的です。

江戸時代も中期になると庶民は金銭的にも時間的にも余裕ができて、朝から夕刻までの営業になったのかもしれません。これはあくまで推測です。

信節さんが、早起きの例としてあげていた豆腐屋さんですが、明治、大正、昭和も戦後の30年代ごろまでは早朝、パフーッというラッパの音を響かせて、自転車で豆腐を売っていました。いまとなっては昔の話です。時代は変わるものです。

丘圭・著