髪結さんは歯が命

髪結さん、結髪師は歯が命、といいます。
理由は、髻を結うときに元結の一方を歯でしっかり固定して、きつく結ぶためです。きつく髷を結わなければ髷が安定しません。それには手だけではダメで、歯で元結の咥える必要があります。

きつく結うには元結の進化もあります。紙を撚った1.2ミリほどの元結には糊が仕込んであり、髪結さんは結う前に湿らせて結いあげます。濡らすことで糊がはたらき髻が固定されます。もちろん元結は使い捨てで、髪を解くとき鋏で切り捨てます。

きつく結う日本髪です。長年、日本髪を結っていると、日本髪特有の髻ハゲになります。最初は天頂分、百会あたりの中央が薄くなり、その部分で髻が結えなくなると、場所を周囲に移して髻を結います。すると当然、徐々に脱毛部分が広がります。
西洋のポニーテールハゲもこれに類する脱毛で、要は毛髪をひきつめ過ぎるからです。

脱毛は、男性はホルモンバランス、女性はストレスなど心因性のものが多く見られますが、髻ハゲもポニーテールハゲも物理的な要因によります。それほどまでにして髪型にこだわるのが女心かもしれません。
ちなみに頭頂部が薄くなった女性は、黒い油墨を塗ってかくしたり(通称「くろんぼ」)、黒い毛を取り付けた「びんのみ」を貼り付けてハゲを隠したといいます。

髪結さん、結髪師はいつまでも働ける、定年のない仕事ですが、髪結さんいわく、「歯がダメになったときが引き際」ということです。

丘圭・著