江戸の歯磨きは口臭防止

日本人は清潔好きです。先日、霞が関の官庁に行ったら昼どきの洗面所は歯磨きをする男性職員でいっぱいでした。
歯磨きの習慣は、江戸時代に既にありました。現在の歯磨きは食後が定着していますが、江戸時代は早朝、起き抜けの歯磨きでした。

『当世三十二相』(歌川国貞)

江戸時代の歯磨きは、房楊枝で歯に詰まった食べかすを取り除くこともしましたが、もう一つ口臭を除去するのが目的でした。
いまの日本人も匂いに敏感ですが、江戸の人々も口臭に気を使っていました。逆に口臭のある人は嫌われました。遊女の嫌いなものに「‥客のさめ肌、歯を磨かぬ客‥」(『今昔吉原大鏡』(天保5年・1934)とあり、同衾する客の口臭を嫌ったのがわかります。

『唐錦』(寛政12年、1800)という女性の訓書には「‥玳瑁(タイマイ)の箆(ヘラ)して舌を削り‥」とあります。さらに『都風俗化粧伝』(文化10年、1813)には朝行なう化粧の心得として、鼻毛取り、耳垢取り、歯磨きなどについて記したあと、「楊枝にて舌の上の滓をなでさり、食事ののちは湯か茶を口に含みて食事の滓を吐き去るべし‥」とあります。
実際、房楊枝で舌苔を削いでいる女性を描いた浮世絵が残されています。

三田村鳶魚さん描く江戸っ子は、お粗末な人ばかりなのですが、口論しても頭の弱い江戸っ子は理屈では負かされてしまう。そこで最後のちゃぶ台返しの決めセリフが「てめー、口が臭えぞ、出直してこい!」。江戸っ子も口臭には敏感でした。

ところで、食後の歯磨きの風習は戦後のことらしい。戦前までは多くの日本人は起き抜けに歯を磨いていました。

丘圭・著

*掲載した浮世絵は、歌川国貞の『当世三十二相』より。楊枝で舌苔を擦り落とす女を描いた絵です

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