宮中の男性もお歯黒

前回の「お歯黒の話し」で、嫁いだ女性、つまり結婚した女性はお歯黒にしていたことを紹介しました。しかし、すべての女性がお歯黒にしていたわけではありません。

適齢期前の娘は別にして、それ以外にも非人の女や、一部の遊女はお歯黒にしていませんでした。

また、お歯黒は女性だけのものかというと、そうではありません。一部の男性はお歯黒にしていました。殿上人の高貴な男性です。
平安時代のはじめ、ある殿上人の男性が女官を真似て、お歯黒にし眉を剃り落としたところ、その優雅でみやびた姿が好評で高貴な男性の証としてお歯黒が広まったという説があります。女装趣味がある高貴な人がはじめたのがきっかけといえます。
ただ男性のお歯黒には諸説あります。

高貴な人のお歯黒は幕末まで続き、幕末に海外の使節団に謁見した明治天皇はお歯黒に眉を落とし、頬紅を付けていたことが、謁見に列席した外国の団員が書き残しています。

慶応4年(1868、明治元年)3月26日、京都御所・紫宸殿で英国のパークス公使とともに天皇に謁見した、英国貴族のミッドフォードは天皇に間近に接し、「‥眉は剃られて額の上により高く描かれていた。頬には紅をさし、唇は赤と金で塗られ、歯はお歯黒で染められていた‥」と書いています。
さらに「現人神(あらひとがみ)の少年が雲の上から降りてきて、人間の子と同じ席に着いて、その尊い顔を人の目に触れさせ、『外夷』と親交を結んだ‥」と感無量だったようです。

お歯黒は、明治になって禁止されますが、禁中の男性のお歯黒は女性よりも早く、明治2年にお歯黒停止、翌く3年に禁止されています。

いまの美的感覚するとかなり違和感のあるお歯黒ですが、よい面をあげるとすると、虫歯予防、歯周病予防に効果があるそうです。試してみますか?

丘圭・著