筆でチョコチョコと描き足す日本髪

新日本画とよばれる絵画分野があります。新版画も含まれ、ここに描かれる日本髪は、江戸時代の浮世絵よりリアルに描かれている、とされています。

「浮世絵モダーン」展より

そこで、「浮世絵モダーン」展(町田市立国際版画美術館、2018年4月21日~6月17日)に行ってきました。

展示会では、伊東深水や橋口五葉ら大正期から昭和初期にかけて活躍した画家らの美人画が多く展示され、なるほど、リアルな髪型が描かれていると思った次第です。

江戸時代の浮世絵は、喜田川守貞さんが『近世風俗志』で、いま(江戸時代後期)の浮世絵に描かれている髪型は実際と違うことを後世の人に警鐘していますが、新日本画の画家は西洋の写実主義の影響を受けてか、よりリアルに描こうとしたようです。当時の日本画家は髪結さんにモデルの髪を結ってもらい、それをスケッチして描いたといいます。

京都に日本画家で版画家の吉川観方さん(894年-1979年)という画家がいて、絵の資料にするために有職故実の研究会を開いていました。この会には、上村松園さんや勝田哲さん、福田恵一さんら著名な画家が参加しています。

その研究会で日本髪を結っていたのが、髪結師の南ちゑさんでした。
南さんといえば、初代の南じうさん、南ちゑさん、そして3代目の南登美子さんと続く、髪結師(有職美容師)として京都で活躍する家柄です。

髪結師の南ちゑさんが結う日本髪に画家からはいろいろな注文がでるのですが、絵画的な注文にすべて応えられるわけではありません。そんな時、母親の南じうさんが「人間の頭はそういきまへん、毛の足りないところは筆でチョコチョコとお描きしたらよろしおす」と助け船を出したといいます(『結髪の匠』・南ちゑ編、中嶋幹夫・著)。昭和14、5年のころの話と『結髪の匠』は紹介しています。

やはり実際の髪型は、絵画表現での理想とは違うのです。「足らないところは筆でチョコチョコと描き足して」画家の理想とする髪型が完成するのです。

丘圭・著