「ゾウモツ」「アンコ」

業界には業界だけに通じる隠語、独特の言葉があります。数の数え方が稼業によって独自の符丁を使うのはよく知られています。以前、髪結職(床屋)の符丁(「髪結職の符丁」)を紹介しました。

髪結にも独自の言い方があります。「ゾウモツ」という言葉を髪結さんが発したとき、わずかながらではありますが、髪結の書籍を読んでいる小生はピンときました。ですが、一般の人は「?」だったと思います。「アンコ」といえば、わかる人がいたかもしれません。

203高地髷を実演中のことで、廂の中に入れる、しゃくまげ、かもじのことを「ゾウモツ」と称していました。「ゾウモツ」を入れることで、廂の部分を形作り、整え固定します。
「ゾウモツ」とカタカナで表記しましたが、臓物と書いたのでは生臭くて、グロテスクです。意味合いとしては内蔵物であることに違いありません。

203高地髷を結っていた髪結さん、「ゾウモツ」を入れ込んだ髪型で最大なのは塩沢ときさんのヘアスタイルと断言していました。なるほど、デカイ(写真)。ギネスに登録すれば間違いなく認定されそうです。

*塩沢とき(1928年~- 2007年)女優。
1984年(昭和59年)、56歳のとき、テレビ番組『ライオンのいただきます』にゲスト出演、大きく結った独特のヘアスタイルで人気に。この髪型の「ゾウモツ」は発泡スチロールの特注品で、しゃくまげ、かもじとは違いますが、日本髪、束髪と切っても切れない関係なのが「ゾウモツ」です。

丘圭・著