髪結床の町役

よくある江戸のガイド本の続きです。髪結賃は、土地によっても違うし、時代によっても変化したことを前回書きましたが、今回は髪結床の町内における役目についてです。

火事が出たときに役所から書類を持ち出す役を仰せつかった、と記載したガイド本をよく見かけます。このほか収監された囚人のヒゲ剃り役、高札を管理する役目などもあります。

いづれも間違っていません。以上の記述はおもに江戸市中のことですが、大坂では橋の見張り、管理をする番役を命じられていた、と記述したガイド本もあります。髪結床の立地によって、ふさわしい町役を仰せつかったようです。高札場の近くなら高札の管理、橋の近くなら橋の管理、奉行所などの近くなら書類の持ち出し、牢屋の近くなら囚人の髭剃りといった具合です。

橋、高札場は人出の多い場所です。そのようなところの近くには出床がありました。江戸でも橋の近くの出床は橋番をしたと思います。橋番というのは、橋を点検し破損箇所があったら町役、奉行所に連絡したり、洪水のときは橋の見張り役をします。

また江戸では町ごとに床屋があり、町内に怪しい人が出入りするのを監視する役目をしていました。江戸の髪結床は客も床屋も道路に向いて、通行人を見ていました。江戸市中の自治に取り込まれた髪結床は、町の警邏が主な役目で、岡っ引きをしていた床屋は少なくなかったようです。

前回の髪結賃でも書きましたが、江戸時代は、半独立国家的な藩が200以上もあり独自に領内を治めていました。江戸、大坂とは、また違う髪結床の役目があってもおかしくありませんし、藩によっては役目なしで床を張っていた髪結があってもおかしくありません。

丘圭・著