髪型風俗を変えたマルセルアイロン

マルセルアイロンは、フランス人美容師のマルセル・グラトーさんが1860年に開発した美容器具です。コテを加熱して、その熱で毛髪にウエーブを形成します。当時、欧州では馬の毛を縮らせる風習があり、その馬用のコテを人毛用に改良した器具です。

マルセルアイロンでつくるウエーブは大評判になり、しがない美容師だったマルセル・グラトーさんは一躍、上流階級の御婦人から引っ張りだこの人気美容師になりました。

マルセルアイロンはその後、欧州や米国でも流行り、日本には明治後半に伝来しました。
耳隠しという髪型が明治の後半に流行りますが、これはウエーブをあしらった髪型で、マルセルアイロンの伝来とあいまって流行った髪型といえます。

理美容業界ではマルセルアイロンといえばプロ専用の器具と思っている人が多いようですが、セルフ用として一般家庭にも普及したようです。当時の一般紙などにマルセルアイロンの広告が掲載されていて、広く販売されたのがわかります。もちろんプロの美容師も太さの違うマルセルアイロンを何種類か用意して営業に使っていました。

日本髪は、直毛だから可能な髪型です。まれに生まれながらの縮毛女性がいるのですが、縮毛ゆえに髪を結うのにひと一倍苦労しています。
マルセルアイロンは、古代から続く日本の直毛・結髪の髪風俗を変革させた画期的な器具です。
民間にウエーブヘアが広まったことで、その後のパーマネントウエーブの流行へとつながります。加熱による一時的なウエーブの形成からパーマネント(永久)、長時間持つウエーブへ移行していき、戦後、美容店がパーマ屋さんといわれるように一大技術に育っていきます。

ウエーブヘアは断髪がともないます。長かった日本髪はウエーブヘアの台頭とともに断髪へと移ろいます。マルセルアイロンは日本人女性の断髪、洋風化に大きな影響を与えた道具であったのは間違いありません。

戦後になりますが、男性の髪型においても、理容業界にアイロン器具の利用が普及し、硬い直毛を整える平アイロン、さらにカールをつくる丸アイロン、それに薬液処理するアイロンパーマ(アイパー)、デザインアイロンが広く行われ、理容業界の一時代を築きます。
男性用のアイロン器具の元祖もマルセルアイロンです。

丘圭・著

髪型風俗を変えたマルセルアイロン」への1件のフィードバック

コメントは停止中です。