木戸松子と高杉梅之進少年

明治初期の女性の髪型はシンプルなものが多い。日本髪というと左右の鬢にボリュームをもたせ、存在感のある髷をイメージする人が多いと思いますが、それは芸者や遊女の髪で、明治になって職業として公許された髪結さんの手を借りて結った髪です。一般女性は日常の生活ではセルフで結っていました。

木戸松子と高杉梅之進少年写真の女性の髪もそうです。左右の鬢はきれいになでつけていますが、張り出してはいません。前髪も同様、吹き出すようにはしていません。この写真からは髷は不明ですが、簡便に結ってあるはずです。

写真の女性は木戸松子さんです。元京都の芸妓・幾松で、後に木戸孝允(桂小五郎)さんの夫人になった人です。撮影月日、撮影場所は不明ですが、明治初期、東京で撮影されたものと思われます。

新選組に追われる桂を救った逸話が知られていますが、二人は明治元年に結婚し、東京に移ってます。明治10年に木戸が死去すると、松子は剃髪して尼姿になっていますので、写真はその前です。しかも眉毛を剃っているので結婚後になります。

隣の少年は高杉晋作の遺児・梅之進くんです。どこか写真で見た父親の面影があります。彼は元治元年(1864)生れ。この写真を撮ったのは5,6歳でしょうか。すると明治3,4年のころの撮影になります。天保14年(1843)生まれの木戸松子さんの年齢は27、8歳の計算になります。(老けた印象ですが、眉を剃ると老けてみえるものです。写真ではわかりませんが、お歯黒をしている可能性もあります。21世紀の人がみるとグロテスクに感じるかもしれません)

冒頭、明治初期の女性の髪型はシンプルなものが多いと書きましたが、江戸時代も同様です。髪結は江戸中期に登場しますが、髪結仕事の対象は限られていました。地女の日常生活は忙しく、髪を結うのにたっぷりと時間をかけていられなかった。

丘圭・著