眉を剃って顔直し

江戸時代の女性は、結婚するとお歯黒にし、眉を剃り落とすのがならいでした。

江戸では元服、お歯黒だけで眉を剃り落としていない状態を半元服といっていました。上方では、顔直しといっていました。

眉を剃り落とすと顔の印象がガラリと変わります。まさに「顔直し」です。眉のない顔は、無表情です。のっぺりとして不気味です。
最近はあまり見かけませんが、むかしは眉を剃り落としたヤクザ者がいました。相手に与える威圧感は絶大です。

眉は、汗や水滴から大切な目を保護するという役目もありますが、人とのコミュニケーションをとること役目もあります。眉があるのは人類だけといわれています。人類が言語を獲得する以前、眉毛はコミュニケーションの役割を果たしていたという説があります。

眉毛を動かすことで、さまざまな感情を相手に伝えることができます。好意、敵意、驚愕、笑いなどなど。単純な感情の表現にすぎませんが、約500万前に猿人類といわれる初期の人類が地球上に誕生して以来、眉毛は人類にとって重要なコミュケーションツールです。

目は口ほどにものを言う、という格言がありますが、目のなかには眉毛が含まれています。感情表現に欠かせない眉毛を剃り落とすのは、江戸時代の女性にとって相当抵抗があったはずです。

丸顔の面長になる恥ずかしさ

と古川柳にあります。ふくよかな娘の丸顔が、眉毛を剃り落とすことで、のっぺりとした面長になって一気に老け込んでしまうことを詠んだ句です。この句のほかにも、初めて眉毛を剃り落とすときの辛い心情を吐露した川柳はたくさんあります。

丘圭・著