爪紅、つまくれない、鳳仙花

日本の女性にすっかり定着したネイルです。爪の化粧は江戸時代から行われていました。爪紅、つまべに、つまくれないです。

江戸時代の化粧法は、墨、白粉、紅の黒・白・赤の三色が基本で、紅は頬紅、口紅、ときには目元にも塗られていましたが、爪にも使われていました。

『女重宝記』(元禄5年/1692)に「紅なども頬さき、口びる、爪さきに塗ること薄々と有るべし」とあり、当時は爪にかぎらず紅は薄く塗るのがよいとされていました。品のいい薄いピンク色に塗っていたようです。
ジェルやラッカーでつくる華やかなネイルもいいですが、シンプルで控えめな爪紅も風情があります。

ただ市中の女性が爪紅をすることはまれで、主に官女や高禄の武家の女性が爪紅をしていました。加賀藩前田家の『女中化粧鑑』(江戸末期)に、不祝儀のときは爪に限らず紅を用いるのは遠慮するようにと書かれています。

爪紅を撞木に隠す比丘尼御所

という川柳(宝暦9年・智3)があります。公家などの高貴な出の尼僧は爪紅の習慣が身についていたのでしょう、不意の来客に思わず撞木(鉦をたたく丁字型の棒)で紅のついた爪を隠した、と詠んでいます。

女の子は、鳳仙花で爪紅のまねごとをして遊んでいました。
「鳳仙花、女児、この花と酢漿(かたばみ)の葉を合わせ、爪をそむる」『大和本草』(貝原益軒、宝永7年1709)の記述を『嬉遊笑覧』が引用して紹介しています。
女の子が鳳仙花で爪を赤くして遊ぶ風習は江戸時代よりも古くあった風習のようです。鳳仙花には「つまくれない」との別称があります。

ネイルは古くからある日本文化の一つです。

丘圭・著