風土が生む風俗、風習

その土地の風土は、その土地の風俗、風習の源泉といえます。日本では、日本の風土にあった植生が風俗、風習に大きな影響を与えています。

その代表は米です。米は食料として日本人を養ってきましたが、風習にも影響を与えています。米のとぎ汁はゆするぎと称して、平安王朝のころより洗髪剤として、また美容液として使われてきました。江戸時代には米ぬかを袋に詰めて洗い粉として使っています。貧しい農民は藁で髪を結んでいましたし、籾殻は緩衝材として、また寝床として活用されてます。

意外に知られていませんが、海岸に多く植生している松もいろいろと使われています。松明(たいまつ)といわれるくらい油分を多く含む松は日本の夜を照らしてきました。また松の燃焼温度は高く、これが日本刀に焼入れに好都合でした。日本文化の一つといえる日本刀は良質な鉄(安来鉱など)、鍛錬に適した温度になる松、そして最後の仕上げで使う本山砥があったから、生まれたものです。

この松は化粧材料として松脂が使われています。粘着性が高く、紅に混ぜて使うことで頬や唇に定着させます。
日本の化粧法の色は、白、黒、赤の3色が基本です。白は白粉で鉛や水銀が原料ですが、日本に多く産出します。黒は真菰を焼いた墨が材料です。真菰はいまは少なくなりましたが、古代より日本各地に自生していました。赤は紅花を精製して作ります。紅花は東北地方に多く植生し、寒い時期につくる寒紅が良品とされています。

また、日本髪や丁髷を結うのには鬢付け油が必要ですが、これは木蝋と椿油などの植物油を混ぜて作ります。木蝋の含有が多ければ固く、逆に植物油が多ければ緩くなります。一昔前のチックとポマードのイメージです。
髪型によって硬さの違う鬢付け油を選んで使っていました。より強く固めるには松脂を配合します。
これらの材料が日本には豊富にあったことから鬢付け油ができ、鬢付け油があってはじめて日本髪は生まれたのだと思います。

丘圭・著