際化粧で襟足や額の線を整える

襟足や額の生え際の線を整えることを際化粧ともいいます。日本髪に合う額は富士額といわれていますが、襟は二本襟、三本襟があります。

『守貞漫稿』によると、二本襟、三本襟、江戸と上方では呼び方が違い、江戸では一本襟、二本襟と呼ぶといいます。江戸は毛の生えている部分を数えるのに対し、上方は白粉を塗る部分を数えている、その違いです。

二本襟にしろ三本襟にしろ襟足をきれいに見せるには、生え際を整えなければなりません。どのようにして整えていたかというと、毛の足りない部分は際墨で描き足し、不要な毛は剃刀で剃るか、毛抜で抜いていました。

襟の部分の白粉は顔より白くして襟足を際立たてます。
日本髪、着物の和装は、背面の美しさが一つの特長になっています。背面美は日本民族の美意識の表れともいえます。多彩な帯結びが背面の美しさを強調するのと同じくらい、すらりと伸びた襟足も和装の美には欠かせません。

21世紀のいま、二本襟、三本襟は舞妓さんなど限られた人を除いて無縁な存在です。多くの女性はあるがままの襟で、アップスタイルにしています。あるがままの襟のことを坊主襟と『守貞漫稿』はいってます。江戸の時代も、普通の女性、地女は坊主襟が多かったようです。

際化粧という言葉、一般的ではありません。『広辞苑』にも載っていません。いつごろから使われたのかも不明です。

余談ですが、顔剃りは理容師の独占業務ですが、昭和22年通知で「美容師による化粧に付随する顔剃り」を認めています。おそらく、襟足や額のラインを整えるのを想定しての通知だったと思われます。

丘圭・著