髷文化は日本の風土から

日本は江戸時代までは、大陸の影響を受けながらも独自の歴史、文化をもって歩んできました。江戸時代の265年間、鎖国と称される体制を敷いてきたことも、他の国から影響を受けずに、他の民族にはみられない独自の歴史、文化を形成できたことにつながります。

独自の歴史、文化は、そこに生きる人々が住む土地の気候や風土とともにあります。
江戸時代の日本人が作り上げてきた食文化、建築、陶磁器、織物などは西洋や大陸のものに劣りません。浮世絵などの絵画、俳句などの文芸、茶道、華道などもそうです。

例えば日本刀は切る道具としても、装飾品としても世界に類をみないほど優れています。鉄を鋳造し鉄器を製造する技術は大陸から朝鮮を経て日本に伝わったものですが、日本には刃に最適な鉄鋼があり、鋼をつくるのには高温が必要ですが、最適な松があります。さらに刃は研いで仕上げますが、本山砥が産出します。これらの条件が整った風土だから、優れた刀が生まれたのだと思います。

江戸時代の男髷、女髷の日本髪も同様です。髷文化は、まさに日本独特の文化といえます。同時期に西洋にも装飾性の高いユニークなアップスタイルの髪型が登場し貴族の女性がしていますが、日本髪とは趣がまったく異なります。

日本の髷文化が発達したのには、まず日本人が直毛であることがあります。白人や黒人のウエーブ毛や縮毛では日本髪はできません。
髷を結うために必要な紐、元結は丈夫な和紙を撚って作ります。髷は面を美しさが必要ですが、これには鬢付け油がなくてななりません。鬢付け油は、木蝋と松の脂、それに椿油などの植物油脂を調合して硬さを調整して使います。いづれも日本に植生しています。江戸時代になって鬢付け油が作られるようになって髷文化が発達したといえます。

さらに日本人の器用さがあります。髷を結うときも必要ですが、タボさしや鬢さしなどの小道具類や装飾性の高い櫛や簪などの飾り物が、江戸中期に登場し、髷、とくに日本髪を美しく飾り立てました。

日本独特の髷文化ですが、男髷は明治維新で洋髪になり、明治の中ごろにはなくなりました。女性の日本髪は江戸後期から明治時代に全盛となりましたが、大正期から昭和初期にかけて洋髪が登場し、太平洋戦争を境にごく一部の女性以外はしなくなります。

丘圭・著